■東向島という街

「東向島」という地名は昭和35年(1965)の住居表示変更の際に、「寺島町」からの改称よって生まれました。しかし、ある程度のご年配の方には記憶にあるはずの、また多くの文学作品の舞台として知られた「玉ノ井」という地名は、町名としては存在したことがありません。「玉ノ井」は元々、広い寺島町(村)の一部を示す「字名」で、地元の人たちだけに使われていた地名だったのです。

昭和62年(1987)まで使われていた「玉ノ井」という駅名はこれによっていたのです。

旧玉ノ井駅

旧玉ノ井駅(昭和32年頃)

その「玉ノ井」の駅名や地名が地域以外の人々に広く知られるようになったのは、昭和12年(1937)に発表された永井荷風の「墨東綺譚」がきっかけでした。

当時の玉ノ井には「銘酒屋街」と呼ばれる歓楽街がありました。

荷風はこの街に住む「お雪」という女性との交流、また街の風情を濃密に描きました。

作品は東京朝日新聞に連載されて評判となり、後には岩波書店から出版され、戦後には二度にわたって映画化もされています。多くの作品を残した荷風ですが、この「墨東綺譚」を代表作と考える人が多いようです。

玉ノ井はその後も、吉行淳之介の「原色の街」、漫画家・滝田ゆうの「寺島町奇譚」など多くの文学・芸術作品の舞台となりました。表現者にとって、「玉ノ井」が独特の魅力を備えた街だったことの証しでしょう。なお、滝田ゆうは、寺島小学校(現第二寺島小学校)で落語家の三遊亭円歌師匠と同級でした。玉ノ井は文化人を生む街でもあったのです。

現在の東向島は荷風や吉行淳之介が描いた「玉ノ井」とはだいぶ印象が違う街になっていますが、気さくで人情味の豊かな庶民が暮らす街であることは変わりません。下町らしい下町、下町のなかの下町。私たちはその自負を持ち、この街を愛しています。

■向島百花園

(東向島東向島3-18-3。東向島駅から徒歩約8分)

向島百花園「庭門新緑」「向島百花園」、名前の通り四季を通じて様々な花や草木の鑑賞が楽しめる伝統的な日本庭園です。

この庭園は200年以上も前の文化元年(1804)頃、江戸の骨董商・佐原鞠塢(さはらきくう)が開きました。

当初は梅園でしたが、その後は万葉集や中国の古典、詩歌にちなんだ草木が多く植えられ、文人墨客のサロンとして使われたそうです。

日本にただ一ヶ所残っている江戸時代そのままの庭園として国の名勝・史跡に指定されており、都立文化財9庭園の一つでもあります。

池を配した園内では、季節の花々はもちろん、野草や野鳥、昆虫、また文人の句碑などが鑑賞できます。なかでも特におすすめしたいのが、「花の棚」、「つる物棚」、そして「萩のトンネル」。

「花の棚」では5月の藤、8月の葛、10月には三つ葉アケビなどが、「つる物棚」では7月から9月にかけて瓢箪やヘチマなどのつる草が楽しめます。「萩のトンネル」は全長約30m、9月下旬に見ごろを迎えます。

園内では、1月には皇室に献上する「献上七草籠」の展示、夏から秋にかけては「虫ききの会」、「月見の会」、また十三夜(10月)には「栗名月を楽しむ」「月光浴を楽しむ」など、それぞれの季節を楽しむ催しも行われます。

*開園時間:9:00~17:00(入園は16:30まで)。年末年始休園

http://www.tokyo-park.or.jp/park/format/index032.html

■東武博物館

(東向島4-28-16。東向島駅高架下)

東武博物館入口博物館外展示車両東武鉄道の創業90周年を記念して平成元年(1989)に開館した、鉄道を中心にバスやロープウェイも展示されている交通系博物館です。

館の内外には東武鉄道の創業期を支えたSL(蒸気機関車)や初期の電気機関車、昭和30年代にデビューして日光や鬼怒川を結んだロマンスカー「けごん」など、各時代の車両が数多く展示されています。

車両展示の他にも電車とバスの運転シミュレーター、電車や鉄道運行の仕組みを学べるコーナー、鉄道模型ジオラマ、ギャラリー、ミュージアムショップなど、見逃せない展示や施設が盛りだくさん。

鉄道ファンでも、そうでなくても、一度入ったらなかなか出られなくなってしまうこと請け合い。隅々まで楽しんでください。

*開館時間:10:00~16:30(入館は16:00まで)。月曜日休館

http://www.tobu.co.jp/museum/

■玉ノ井カフェ

(東向島5-27-4。東向島駅から徒歩約5分)

玉ノ井カフェ1玉ノ井カフェ2昭和の雰囲気を楽しみながらくつろげるコミュニティカフェです。

「寺島・玉の井まちおこし委員会」など、地元の人たちが協力して平成23年(2011)にオープン、現在は「寺島・玉ノ井まちづくり協議会」が運営しています。

玉ノ井ブレンドのコーヒー、ポットサービスの紅茶、ジンジャーエールなどと一緒に自家製のケーキも味わえます。

「墨東綺譚」で玉ノ井を描いた永井荷風をイメージした「荷風ブレンド」のコーヒーもぜひ味わってみてください。

店内には玉ノ井の今と昔を知ることのできる地図や資料が展示され、永井荷風や地元出身の漫画家滝田ゆうの本もご覧いただけます。

飲み物を手に、遠くなった昭和、往年の玉ノ井を想像してみてください。

*営業時間:10:00~18:00。水曜・木曜定休

http://tamanoicafe.blog.fc2.com/

■セイコーミュージアム

(東向島3-9-7。東向島駅から徒歩約8分)

SEIKOミュージアム1SEIKOミュージアム2時計のSEIKOが運営する、「時」と「時計」をテーマとするミュージアムです。

日本初の目覚まし時計や世界初のクオーツ式腕時計など、SEIKOの製品開発の歴史が展示されているのはもちろん、太陽光や水・火・砂などを使った古代の「時計」、不定時法だった時代の和時計など、「時を計る」ための人間の工夫と時計の進化の歴史も学べます。

SEIKOは、昭和39年(1964)の東京オリンピック以来、多くの国際的なスポーツ大会で公式計時を担当しています。

それらの大会で活躍した機材が展示され、水泳のタッチ板を使った計時体験ができる「スポーツ計時体験コーナー」も見逃せません。

ミュージアムショップには最新の時計の他、「ここだけ」のオリジナル商品が揃っています。

*開館時間:10:00~16:00。月曜日休館

http://museum.seiko.co.jp/

・墨田銘品名店会 http://meiten-sumida.com/

・隅田川七福神めぐり http://members2.jcom.home.ne.jp/sirahige/

これらのスポットへの行き帰り、また下町・隅田川周遊の際には、ぜひ東向島駅前商店街にお立ち寄りください。